Yukio Diary -金澤幸緒のブログ

タイタンキャピタル株式会社 金澤幸緒のブログ

仕事のお話 -デイヴィッドが手がけたミュージカル「Boop! The Musical」

金澤幸雄です。

 

私の親友のひとりに、世界的に知られる音楽プロデューサーのデイヴィッド・フォスターがいます。音楽家として類まれな才能にあふれていながら謙虚で努力を惜しまず、第一線で活躍しつつも常に新しいことに挑戦するパッションを燃やし続けている、私が尊敬する人物です。

 

あるとき、彼が私に「世界中のファンに喜んでもらえるようなミュージカルを作ってトニー賞を獲りたい。それが僕のずっと温めてきた夢だ」と打ち明けてくれました。私はそれを聞いた瞬間、華やかなショービジネスの世界で数々のヒットを生み出し、押しも押されもせぬ存在となったデイヴィッドにも、まだかなえていない夢があったのかととても感激し、反射的にこう答えていました。

 

「話してくれてありがとう。デイヴィッドの夢は私の夢でもある。もし助けが必要ならなんでも言ってほしい。全力で応援するよ」

 

実際の話、彼の夢をかなえるためにどれだけの資金を用意すれば良いか、そこにどんなリターンがありリスクがあるのかなどといったビジネス上の目算のような思惑はまったく浮かびませんでした。その点では、その当時の私は経営者としては失格だったのかもしれません。ただ、信頼できる親友の夢に自分がどう関われるかという思いだけでした。

 

私もこれまで、不動産ビジネスをはじめとするさまざまなビジネスにおいてたくさんのプロジェクトに関わり、色々な挑戦をしてきました。その中で大切にしてきたものは、「喜びも悲しみも成功も失敗も、そして夢も、すべて仲間と分け合う」という姿勢を忘れないことです。仲間の夢には、人の心を動かす力があると思います。私自身、仲間の夢に力をもらったことが何度もあるからこそ、仲間が描く夢には、私は一切のためらいなく援助をします。

 

デイヴィッドが手がけたミュージカル「Boop! The Musical」のプレビュー公演を迎え、私は共同プロデューサーとしてニューヨークに飛び、ブロードウェイの老舗名門劇場であるブロードハーストの客席でその舞台を見守りました。スタンディングオベーションを受けるディヴィッドはとても満足そうに私に笑いかけてくれました。終演後には「彼がいなかったらこのミュージカルは生まれなかった」と私をカンパニーに紹介してくれ、夢を実現する一端を担えた自分自身をも誇らしく思いました。

 

boopthemusical.com

 

私はこれからも、仲間の夢を応援し続けるでしょう。夢をつかみ取ろうと何かに挑む仲間の背中を、私にしかできない方法で押してあげることが、私の使命(と言ったら大げさかもしれませんが)で、何よりも価値があることだと思うからです。

 

夢を見るだけならひとりでもできます。しかしその夢を実現させるには、応援し、さまざまな方法で支えてくれる仲間の存在が不可欠です。そして私は、その「仲間」でありたいと願っています。仲間の夢を応援することは、単にお金を出すことや無償で世話をすることなどではありません。仲間の人生に誠実に関わっていき、手を差し伸べていくということです。

 

私は、これからも迷わず仲間に手を差し伸べていきます。

 

金澤幸雄

仕事のお話 -エジプトと空水機


金澤幸雄です。

 

今までもエジプトにはたびたび訪問してきましたが、昨年は特にエジプトの旅が多く、実りある出会いや学びの多い1年になりました

 

「エジプトはナイルの賜物」と古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが著したとおり、エジプトは太古の昔からナイル川がもたらす肥沃な土地と水によって栄え、発展してきました。しかしエジプトは現在、深刻な水不足に陥っています。

 

水不足を表す国際指標(WSI)によると、一人当たりの生活、農業、工業、エネルギー及び環境に要する1年間に必要とされる水資源量は1,700立方メートルで、これが最低基準とされています。エジプトではこれが2023年の時点で550立方メートルしかなく、国際指標が定める最低基準の3分の1にも満たないのです。

 

エジプトは国土の約95%が砂漠で、人が住んでいるのはわずか3%の土地なのだそうです。また、砂漠というのは空気が乾燥しているため、水分がすぐ蒸発してしまいます。それに加えてほとんど雨が降りません。年間降水量はエジプト全体の平均で年間20mm程度ととても少ないのです。ちなみに日本の年平均降水量はというと、1718mmです。これは世界平均(880mm)の約2倍に相当し、日本がいかに多雨かがわかると思います。

 

エジプトのすぐ乾燥する気候と少ない降水量では、水がいくらあっても足りないというのが正直なところでしょう。このように、エジプトにはほとんど雨が降らないため、必要な水のほぼすべてをナイル川から得ています。しかし近年、ナイル川流域の急速な人口増加などにより、エジプトにおける一人当たりの年間使用可能水量が減少の一途をたどっており、このままでは本当に危機的状況になることは避けられません

 

私はこのようなエジプトの状況を少しでも改善できればと思い立ち、MIZUHAの空水機がなんとかこの問題解決に貢献できないかと、年に数回エジプトを訪問して活動を続けているのです

 

空水機とは、簡単に言えば、空気中の水蒸気を飲み水に変える装置のことです。この装置をつくり出すにあたっての一番の課題は、空気中の水蒸気を水に変えるまでは何とかできるにしても、誰もが安心して飲めるようにするためには水質をいかに良くするか(有害な菌を発生させないか)でした。開発スタッフの努力によりすばらしい装置が完成し、今も機能向上のための開発が進められています。

 

こうしている間にも、エジプトの水をめぐる状況は悪化し続けています。私は空水機を通じ、すべての人に安心して飲める水を届けるべく、できる限りの貢献と支援をこれからも続けていきたいと思っています。

 

金澤幸雄

 

Photo by CALIN STAN on Unsplash

「アグリツーリズモ」小牧ヴィンヤード

金澤幸雄です。

 

近年、日本でも人気の高い「アグリツーリズモ」。ヨーロッパ、特に発祥の地と言われるイタリアのトスカーナ地方で人気を博している観光様式のことです。アグリツーリズモとはイタリア語の「AGRICOLTURA(農業)」と「TURISMO(観光)」を合わせた造語で、農家の敷地の中に宿泊所やリストランテなどを備えた施設で過ごす観光スタイルを指します。私も日本におけるアグリツーリズモの“現在地”を学ぼうと、先日、社員旅行の一環として、山梨県北杜市小淵沢町にある小牧ヴィンヤードを訪ねてきました。

 

小牧ヴィンヤード(ブドウ畑)は、八ヶ岳甲斐駒ヶ岳、富士山などの雄大な山々を望む標高820メートルの丘にあり、代表の小牧康伸さんと妻のミチ子さんが2005年にわずか5本のブドウの苗木を植えるところから始めました。5本のブドウから毎年少しずつ本数を増やしていき、今ではメルローカベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、バルベラ、ソーヴィニヨンブランなどのほか、さまざまな種類の計4000本のブドウの木を栽培するまでになり、畑を皮切りにワイナリーやリストランテ、宿泊施設などのアグリツーリズモに必要な周辺環境を整えていったということです。

 

客室はヴィンヤードの中にあり、窓からは垣根式のブドウ畑を眺めることができました。希望者にはグランピングスタイルでの宿泊もできるそうです。また、星空の下で焚火を眺めながらグラスを傾けたり、ブドウ畑で行うヨガやワインセミナーなどのオプションも充実しており、私も小牧ヴィンヤードでしか味わえない体験をたくさん得ることができました。

 

康伸さんは帝国ホテルに入社後バーラウンジに勤務され、アメリカ・ニューヨーク総領事公邸へ出向し、帰国後に日本ソムリエ協会の第一回ソムリエ認定試験に合格。その後、大阪の帝国ホテルでチーフソムリエとして働いた、日本のソムリエの第一人者、草分け的な存在です。

帝国ホテルを退社してからは地元の山梨県に帰り、ブドウ栽培に適した気候条件が揃った小淵沢町に小牧ヴィンヤードをつくりました。ソムリエ、バトラーなどのキャリアを活かしつつも、ブドウの苗からのワイン造りというまったく経験のない分野に真正面から挑み、ワインを通じて小淵沢町のすばらしさを内外に広めていく姿には感銘を受けますし、私も今ある知識、仲間などの「財産」を大切に、どこまでもチャレンジを続ける人生でありたいと大いに刺激を受けました。

 

金澤幸雄

不動産投資のお話 - タワーマンション節税について

 

タイタンキャピタルの金澤幸雄です。

 

タワーマンションは不動産の中で特に人気が高く、資産価値も高いとされる物件のひとつです。タワーマンションとは、一般的に20階建て以上のマンションのことを指し、眺望の良さや豪華な共用施設、高いセキュリティなどが富裕層をはじめファミリー層や海外の投資家など幅広い層に人気です。こうしたタワーマンションの購入によってできる相続税対策はタワーマンション節税(タワマン節税)と呼ばれ、注目を集めています

 

タワマン節税とは、タワーマンションは購入金額に比べて相続税評価額が大幅に低くなる、というタワーマンションの特性を生かした節税のことを言います。つまり、タワーマンションの購入価格と相続税評価額の差額を利用することによって、相続税の負担を大幅に抑えることができる、というものです。

 

ここでは、現金と比較して相続税が低い不動産の中でも、戸建てや普通のマンションに比べてタワーマンションの方が相続税評価額を抑えられる理由について解説します。

 

マンションの評価額は、住戸ごとに「建物」と「土地」に分解され、それぞれについて評価額が算出されます。土地については、そのマンションが建つ敷地全体の評価額から各住戸の床面積に応じて按分して計算します。そのため、同じ敷地面積であれば住戸数の多いタワーマンションは住戸数の少ない低層マンションに比べて評価額が少なくなります。タワーマンションは他のマンションに比べて単純に住戸の数が多いため分母が大きくなり、通常のマンションや戸建てに比べて相続税評価額を抑えられることがあります。

 

また、一般的にタワーマンションの市場価格は上層階になればなるほど高額になりますが、相続税評価額は、専有面積が同じ場合、1階だろうとペントハウスだろうと、日当たりが良かろうと悪かろうと一律、同額です。2023年7月現在、タワーマンションの高層階の相続税評価額は、平均すると市場価格の4割程度。これはどういうことかというとタワーマンションの高層階は評価額の約2.5倍で売れる」ということです。

つまり、同じ相続をするなら、現金や株式でよりもタワーマンションの高層階を相続した方が相続税を減らせる場合が多いということです。

 

仮に相続できる金額を1億円として考えてみましょう。

現金として1億円を相続すれば、税率30%、控除額700万円ですから、単純計算で最大2,300万円の税金がかかります。一方、その1億円で生前に相続税評価額が4,000万円のタワーマンションを購入していた場合、課税上の評価額が数分の1ほどに小さくなります。評価額が4,000万円なら相続税は税率20%、控除額200万円としても600万円で済むのです。

その後マンションを1億円で売却すれば、6,000万円を無税で相続できてしまうということになります。

 

魅力的に見えるタワマン節税ですが、近年、課税強化の動きがみられるようになってきました。それについては次項で解説したいと思います。

 

金澤幸雄

ワインのお話 -モンジャール・ミュニュレ

Photo by Johny Goerend on Unsplash

 

金澤幸雄です。

 

今回はモンジャール・ミュニュレ ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ ルージュ ラ・クロワのお話をしたいと思います。

モンジャール・ミュニュレとは、フランス・ブルゴーニュ地方のフラジェ・エシェゾーにある畑・エシェゾー最大規模の生産者。このワインは、フラジェ・エシェゾーにも近いニュイ・サン・ジョルジュの西方、オート・コート・ド・ニュイにモンジャール・ミュニュレが所有する畑のぶどうから作られます。

ニュイ・サン・ジョルジュは現在、ブルゴーニュ地方におけるグラン・クリュ(特級畑)を有していませんが、歴史的にグラン・クリュに匹敵するすばらしいワインの生み出す畑もあるとして、ワイン通の中でも知る人ぞ知る存在です。

そんな「穴場」の地域の一角、オート・コート・ド・ニュイは、実はかつて消滅の危機にさらされていました。しかし、生産者の努力によって見事再生を果たしたのです。

その中でもラ・クロワと名付けられたワインは、樹齢50年ほどの古木から採れた果実のみを使用した特別なキュベ(樽)だそうで、華やかな香りにタンニンの重厚感も感じられ、価格もブルゴーニュの中でも手頃でとてもおいしいワインだと感じました。

 

金澤幸雄

 

 

ワインのお話 -パリスの審判


金澤幸雄です。

 

無名のカリフォルニアワインが、フランスの錚々たるグランヴァンを打ち負かした。

 

ワインを学んでいく中で避けては通れないこのニュースは、1976年に世界中のワイン愛好家やインポーター、ソムリエ、フードジャーナリストなど、すべてのワイン関係者に大きな衝撃を与えました。そして、トロイアの王子パリスが3人の女神の中でもっとも美しい者を決めさせられることになり、これが後のトロイア戦争の発端となった、という、ルーベンスの絵画でも有名なギリシャ神話になぞらえて「パリスの審判(The Judgment of Paris)」と呼ばれるようになりました。

 

今回は、4000年以上と言われるワインの歴史を変えた、パリスの審判の背景を解説します。

 

1941年、イギリスの貴族階級に生まれたスティーヴン・スパリュアは、ロンドンのワインショップを転々としてワインの知識を身に着けた後、1970年、29歳でパリの小さなワインショップ「カーヴ・ド・ラ・マドレーヌ」を買い取り、その後、高級ワインを中心に販売する自身の店としてオープンさせました。

英語で接客を受けられ、なおかつ試飲もできるワインショップは当時のパリでは珍しく、カーヴ・ド・ラ・マドレーヌは近隣に住む多くのワインを愛するアメリカ人やイギリス人をはじめ、多くの客で毎日大変な賑わいを見せていました。

そんな中、カーヴ・ド・ラ・マドレーヌの隣の物件が空き家となります。すでに常連客に向けて、店内でワインのセミナーのようなものを開いていたスパリュアは、その物件を買い取って、世界初の一般人向け本格ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン(Académie du Vin)」を開校します。このときスパリュアは31歳。カーヴ・ド・ラ・マドレーヌを始めてから2年後のことでした。

 

こうして始まったアカデミー・デュ・ヴァンは、英語でワインが学べる唯一のワインスクールということで、多くの外国人(パリに住むアメリカ人やイギリス人)が通っていました。やがてその噂はフランス人たちにも広まり、英語の授業のほかにフランス語での授業もスタートさせることとなりました。

そして、この評判を聞きつけたアメリカ・カリフォルニアのワイナリーの関係者がカーヴ・ド・ラ・マドレーヌを訪れるようになります。彼らが持ち込んだカリフォルニアワインを飲んだスパリュアは、カリフォルニアワインが持つポテンシャルに驚き、カリフォルニアワインの魅力をもっと良く知りたいと思うようになっていったのです。

 

Photo by Tyke Jones on Unsplash

ワインのお話 -「ノロワイン(NOLO Wines)」

金澤幸雄です。

 

今、アメリカを中心とした世界中で「ノロワイン(NOLO Wines)」が注目を集めています。

「ノロ」と聞くと、嘔吐・下痢・発熱などの症状を引き起こす、飲食関連では絶対に避けなければならないあのウイルスを想像してしまいますが、ここで言うノロとは「No and Low alcohol」の略で、ノンアルコールあるいは低アルコールのワインのことを指します。

 

ノロワイン人気の要因としては、新型コロナウイルスの感染拡大による意識の変化が最も大きいように思います。新型コロナウイルス感染を避けるための外出自粛による「外飲み」機会の減少や、免疫力アップのためのバランスの良い健康的な食生活を重視する健康志向などが挙げられます。しかし、ノンアルコール、低アルコールワインの歴史はコロナ禍で始まったものではなく、皆さんが考えているよりもずっと前に遡るということをご存じでしょうか。

 

1841年にドイツのワイン農家に生まれ、若いころからワイン造りを学んでいたカール・ユングは、1868年に親からリースリング種のブドウ畑を受け継ぎ、自分の名前を冠したワインメーカーを設立しました。しばらくは主に年単位で購入する大口の顧客向けにワインを販売していましたが、加齢や病気など健康上の理由から医師にワインを禁止された顧客が離れてしまう事例に遭遇します。

 

営業を担当していたカール・ユングの妻マリアは、ワインの香りや味を保ったままアルコールだけを取り除き、さまざまな理由からアルコールが飲めない人たちにもワインの味を楽しんでもらいたいと思い立ちました。このアイデアをもとに、カール・ユングJr.はワインからアルコールを除いてノンアルコール化する「低温真空蒸留法」を編み出し、1908年、本物のワインに勝るとも劣らないアルコールフリーのワインを世に送り出しました

カール・ユングJr.の編み出した低温真空蒸留法は世界各国で特許を取得し、カール・ユング社は今も世界有数のノンアルコールワインメーカーとして名を馳せています。

 

それから110年以上たった現在、コロナ禍にもそろそろ終息の兆しが見え始めていますが、世界的にはノンアルコール、低アルコールのマーケットは年々需要が高まり続けています。

ノンアルコール、低アルコールのビールや他の飲料と同様、ノロワインもアメリカを中心に大きな伸びを示しており、これからその成長率はさらに加速していくと見込まれています。日本にも多くの種類のノロワインが入ってきていますから、飲みたいけど飲めない人や飲めるけど飲みたくない人は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

 

金澤幸雄

 

Photo by Karsten Würth on Unsplash