金澤幸雄です。
近年、日本でも人気の高い「アグリツーリズモ」。ヨーロッパ、特に発祥の地と言われるイタリアのトスカーナ地方で人気を博している観光様式のことです。アグリツーリズモとはイタリア語の「AGRICOLTURA(農業)」と「TURISMO(観光)」を合わせた造語で、農家の敷地の中に宿泊所やリストランテなどを備えた施設で過ごす観光スタイルを指します。私も日本におけるアグリツーリズモの“現在地”を学ぼうと、先日、社員旅行の一環として、山梨県北杜市小淵沢町にある小牧ヴィンヤードを訪ねてきました。
小牧ヴィンヤード(ブドウ畑)は、八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、富士山などの雄大な山々を望む標高820メートルの丘にあり、代表の小牧康伸さんと妻のミチ子さんが2005年にわずか5本のブドウの苗木を植えるところから始めました。5本のブドウから毎年少しずつ本数を増やしていき、今ではメルロー、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、バルベラ、ソーヴィニヨンブランなどのほか、さまざまな種類の計4000本のブドウの木を栽培するまでになり、畑を皮切りにワイナリーやリストランテ、宿泊施設などのアグリツーリズモに必要な周辺環境を整えていったということです。
客室はヴィンヤードの中にあり、窓からは垣根式のブドウ畑を眺めることができました。希望者にはグランピングスタイルでの宿泊もできるそうです。また、星空の下で焚火を眺めながらグラスを傾けたり、ブドウ畑で行うヨガやワインセミナーなどのオプションも充実しており、私も小牧ヴィンヤードでしか味わえない体験をたくさん得ることができました。
康伸さんは帝国ホテルに入社後バーラウンジに勤務され、アメリカ・ニューヨーク総領事公邸へ出向し、帰国後に日本ソムリエ協会の第一回ソムリエ認定試験に合格。その後、大阪の帝国ホテルでチーフソムリエとして働いた、日本のソムリエの第一人者、草分け的な存在です。
帝国ホテルを退社してからは地元の山梨県に帰り、ブドウ栽培に適した気候条件が揃った小淵沢町に小牧ヴィンヤードをつくりました。ソムリエ、バトラーなどのキャリアを活かしつつも、ブドウの苗からのワイン造りというまったく経験のない分野に真正面から挑み、ワインを通じて小淵沢町のすばらしさを内外に広めていく姿には感銘を受けますし、私も今ある知識、仲間などの「財産」を大切に、どこまでもチャレンジを続ける人生でありたいと大いに刺激を受けました。
金澤幸雄