Yukio Diary -金澤幸緒のブログ

タイタンキャピタル株式会社 金澤幸緒のブログ

音楽のお話 -バイオリンの名器「ストラディバリウス」


タイタンキャピタルの金澤幸緒です。

 

先日のニュースで、大手チェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業者が出品したバイオリンの名器「ストラディバリウス」が、ニューヨークでの弦楽器専門のオークションで落札されたとありました。

落札されたのは、ストラディバリの最も脂ののっていた時期と言われる、いわゆる「黄金期」の1714年に製作され、後に「ダ・ヴィンチ」と命名された名器で、落札価格は1534万ドル(約20億6千万円)。

ダ・ヴィンチは、1924年、トーシャ・ザイデルというロシアのヴァイオリニストが2万5000ドルで購入し、「私たちはお互いにぴったり合っています。それは有名なバイオリン製作者の最高の例の1つであると私は確信しています」と語り、また、「100万ドルでも手放しません」と断言したほど惚れ込んでいたのだそうです。

1924年当時の1ドルは今の貨幣価値に照らすと約16ドル、およそ16倍ということですから、ザイデルは現在の40万ドルほどでダ・ヴィンチを手に入れたことになります。そして、「100万ドルでも手放さない」の「100万ドル」とは現在で言うところの約1600万ドル。およそ100年前にザイデルが例えとして出した金額でこのたび落札されたのも、偶然とはいえおもしろいドラマだなと感じます。

 

弦楽器なんて触ったこともない、興味がないという人でも、楽器としての「ストラディバリウス」、その作者としての「(アントニオ・)ストラディバリ」はたびたびニュースなどで取り上げられますからご存じでしょう。しかし実際のところ、その唯一無二のすばらしい音色が、というよりも、天文学的とも評される高額な落札価格によることがほとんどなのですが・・・。

しかしなぜ、これほどまでにストラディバリウスは高額なのでしょうか。

大きなの理由のひとつに、ストラディバリウスとまったく同じ楽器はもう二度と再現不可能であることにあります。骨董品、芸術品としての価値も最高峰であるストラディバリウスにはいまだ解明されていない謎が多く、使われた材料や製造法など、現代の最新技術をもってしても同じ音色は出せないのだそうです。

材料のエピソードとして有名なのが、木材の質についてです。ちょうどストラディバリが弦楽器を作っていた時期は1666年から約70年間とされていますが、1645年から1715年頃、ヨーロッパ一帯は「小氷河期」と呼ばれるとても寒い時代でした。そのため一帯に生えていた木は成長が遅れ、年輪の幅が小さく密度の高いものになりました。ストラディバリウスに使用する木材もこの特別な木材が使われたため、現代では再現ができないのです。

 

どんな名器でも、飾っておくだけでは意味がありません。次の所有者に渡った後も、名器にふさわしいヴァイオリニストにそのすばらしい音色を奏でてもらいたいものです。

 

金澤幸雄